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'83年入社ですから、もう企画演出歴22年目ですね。

もうそんなに経つ?!22年目?!(驚)会社入って10年目の時、同じ会社にオトコが10年もいて良いのかと思ったけど・・・でもまぁ、今はやりたいことが出来ているから、同じ所にいることに対して抵抗は無くなったかも。

CMに興味を持ち、プランナーやディレクターへなろうと思ったきっかけや経緯を教えてください。

実際にテレビを見ていて「こうじゃないだろう」と思うことがいっぱいあった。スポーツをやっていたので、「足の上げ方はこうだろう」とTVを見て思ってた。実際にフィルムを切ったりしたかった。「プロデューサーと演出があるよ」って言われた。一コマ一コマ手を使うなら、(CMの)プロダクションの演出だなって。

どうして葵プロに入ることになったのですか?

広告会社でアルバイトしていた時、演出をやりたいっていう話をしたら、葵プロと他数社を紹介されたんだ。入る為に、普通の履歴書も書いたりしたけど、自己紹介のコンテも書いたりしたな。それと、アルバイト先の広告会社の人と葵に来て、実際に企画の打ち合わせしたりしてたの。当時いた清水さんっていうプロデューサーから、「君がこのコンテ描いたの?」と聞かれて、「描いた」と言って、それで(葵プロに)潜り込んじゃったの。

最初の演出って覚えていますか?

ハセガワのカーボンシナイ。

どんな演出だったんですか?

ちゃんとした演出!(笑)えーと、今だったら細かい所まで計算してコンテは描くけど、その当時は、そんなに実際の画が浮かんで描いていたわけではなく、こんな画が良いなと思って描いてた。後は現場でカメラマンと照明の人に任せっぱなしだった。(笑)

現場で勉強していったのですか?

うん、もちろん。この仕事はやっぱり現場でやりながら覚えるしかない。全然知らない人と会って、その一個のテーマを元に、初めて会った人と話して・・・知らない人と話すことなんて学生の頃ってないじゃん。ま、もちろんテーマがあるから話できるんだよね。上の人とも下の人とも、話の仕方とか仕事の仕方とか、俺三男坊で要領が良いから、そういうの出来ちゃう(笑)

最初の仕事は楽しかったですか?

楽しい?うーん、“ドキドキ”はした。コワイのもあるけど・・・カメラが回るとスゴイ緊張する。緊張するっていうか、“ドキドキ”する。やっぱさスゴイんじゃないかな、テンションの上がり方。撮影の時って。すっげぇタバコ吸うし、すごいコーヒーも飲むし、チョコレートとかバンバン食うし、きっとテンションがすっごく高いと思う。でもそれが面白くてやってたと思うよ。

撮影が一番楽しいですか?

撮影は面白い、編集も面白い。一番嫌いなのはコンテを描くこと。でも、考えることは嫌いじゃない。

何故コンテを描くことが嫌いなのですか?

コンテは、人に伝える「形式」の為に描くから。話でも何でも内容は伝わるじゃん。「形式」の為に描かなきゃいけないのが一番面倒臭い。

今まで自分の中で、内面的に変わったこと、逆に変わらないことはありますか?

自分の中で?!(悩)・・・考えたことないなぁ。ま、図太くはなってると思うんだ。会社入ってから10年位迄は、企画とかやってると、ずーっとそのことが頭の中にあって、月曜日にあの打ち合わせがあるからと、無意識のうちにネタを探すんですよ。・・・でも最近は土日は絶対仕事しないもんね。そういう意味では図太くなった。

栗田ディレクターにとって、“演出”とは何ですか

難しいなぁー・・・それがわかったら、そういうのをいっぱい書いてウチに飾っておくよ。(笑)・・・演出って何にも出来ないから、芝居も出来るわけじゃないし、カメラ回すこともできないし、ナレーションをしゃべることも出来ない。何も出来ないでしょ。照明作れるわけでもないし。だから人任せなんだよね。そういう意味では、照明作るのに「すみませんお待たせして」って言われても、「いえいえ待つのが演出の仕事ですから」って、いっつも言ってるけど。

自分の思い通りの映像を撮ってもらう為に、周囲の人にどのような気を遣っていますか?

結構自分の好きな人とやらせてもらってるし、紹介されるような人は、人間的にも技術的にもすごくしっかりしてる人達だから・・・長年業界でやってる人達っていうのは「こう思うんですよね」ってちゃんと言うと、ちゃんと話してくれて、わかるまで聞いてくれたり、わかるまで話させてくれたりするから。別にこういう言い方をしようとか気を遣ってないな。

演出って常に明確なビジュアルを持ち続けなくちゃいけなくて、大変じゃないですか?

本当は、“画”じゃないんだよ。“意味”なんだよ。スゲェ難しいかもしれないけど、その“カットの意味”なんだよ。ほんとは。で、カメラマンとは“カットの意味”について話さなきゃいけないんだよ。これは企画部で話した方が良いかもしれない話なんだけど・・・(笑)このカットは、この主人公のコーヒーを飲みたいという気持ちを表すカットだから、僕は、コーヒーの湯気越しの目のアップが撮りたいんだと。で、カメラマンは、いやそうじゃないでしょと。ここの液面に映った顔でしょって。飲みたいっていう気持ちを表現できるのはどっちなんだろうって。どういうアングルだとか、どういうサイズだとかいう話をする。で、コマーシャルって、限られた時間の限られたカットしかない。何カット目にはこういう役割を持たせたカットが必要とか、その為の画な訳よ。で、まぁ俺は、なんとなくわかりやすい画が書けちゃうから、その通りに撮っちゃうんだけど、本当は違うんだよね。「カットナンバー2 飲みたい気持ちを最大限に表すカット」って文字で書いてあるのをカメラマンがそのように撮れば良い。

色々と広告賞を取られていますが、周りから評価されることについてどう思われますか?

誰でも良いから、一人でも良いから「良いですね」って言われると嬉しくなる。作ってる時は、自分の中で一番良いものを作っていると思って作っていて、その時は人の評価は考えていない。それを誰か一人に良いねって言われると嬉しい・・・賞をもらえりゃラッキーっていう。でももらえなくても良いんじゃない。その都度その都度、その商品にとっての良い演出を考えてるから。

自分らしい演出ってありますか?

後から自分の演出を見て、固いとか真面目すぎるとか思う。嫌な部分は気が付く時がある。良い部分っていうのは、自分ではわかんないでしょ。好きでやってるから。人から、こういうものをお願いしますって言われる、受注商売だから(笑)

何人かに栗田ディレクターの印象を聞いた所、“大人”だという意見がありました。

何、その“大人”っていうのは?

例えばクライアントさんが出してきた要望で、自分と意見が合わない時、それを相手に説明し、納得してもらうことができるから“大人”ということだそうです。

まぁ、人間がデカイからね(笑)

海外のスタッフとのお仕事が多いですね。

そうだね。でもどこでも一緒だと思う。俺もスタッフに伝わる位の英語はしゃべれるしね。もうちょっと右だとか左だとか、このレンズ次はああしようよとかこうしようよとか、同じモノを狙ってるんだもん。それは英語じゃなくて中国語でも一緒だと思うよ。それは同じもの狙ってるから、あらかじめベースがあって打合せするから通じますよ。

どのように海外スタッフとの仕事が決まっていくんですか?

例えば、こういう仕事がありますけど、栗田ディレクターにお願いします。つきましては、何処何処のロケなんですが、予算の関係で、現地のカメラマンでお願いしますって、制作部が言うワケよ。(笑)また別の例だと、ある車の撮影の場合は、企画の段階でこういうカメラマンというので画のトーンは決まっていた。八十年代の車のライティングなんですよ。日本ではあぁいう撮り方をしていなくて・・・日本で撮るけど、こういう撮り方をするには、アメリカのカメラマンを呼びましょうと。何人かのカメラマンのリールを見せられて、俺が誰が良いかを選んだ。

では、海外を行き来したいとか、外国人と仕事したいとか意識したりとかはしないのですか?

一時はあった。でも、今は撮りたい画が撮れる人であれば国籍は問わない。やっぱね、カメラやってる人って、撮影するの好きだから、どこの国の人でも変わらないんだよ。

車の撮影が多いですよね。何故、車の仕事が来るんだと思いますか?

さっきの“大人”っていう部分に近いんじゃない? 車の会社って、「こういうラインをしっかり出してくれ」とか、オーダーが多かったり、細かかったりね。でも俺って「それよりもアングルが大胆なのが良いでしょう!」みたいなタイプじゃないじゃん。「あぁ良いですよ、ライン出せるなら出しますよ。」そんなことぐらい出来るからって。今やさ、出来ない事なんかないじゃん。21世紀だぜ!(笑)

他に撮りたいものはありますか?

オファーがあれば何でもやる。撮影して、編集して、仕上げるの好きだから。面白そうであれば何でも。

もし、企画・演出以外の仕事をしていたら、何をしていたと思いますか?

わかんないよ、そんなこと聞かれても(笑)今、ちゃんとした社会人になれてると思うんだよ。ラッキーだなと思ってる。好きなことをやってたから続けられた。だからもし、卒業して銀行や広告会社の営業マンになってたとしたら、つまらなくて、ちゃんとした社会人になってないかもね。でも広告会社の営業は面白いんじゃないのかな。やったことないけど。

面白ければ何でも良かった、それがたまたま演出だったと。

そうだね、大学卒業する頃は体力が有り余ってるから、自分一人が食っていくのなんて何とでもなったからね。

基本的に受けた仕事は断らないというのは何故ですか?

俺が思うとおりにすれば、基本的には何でも面白くなるはずだと思ってるんだよ。理解してもらえれば。理解できる相手の容量・キャパがあれば、基本的には面白くなるはずなんだけど。そういう意味で面白くとか自分には合わない企画だからといって、仕事を断らないという前提に立ってる。でもたまに、さすがにコレは出来ないという内容のもあるよ(笑)

月に何本位演出していますか?

月に1本位。スゴイ少ないよ。フリーの人は・・・いや、別にフリーの人と比べる必要はないけど。もっと多いと思うよ。

先程から、受け身の仕事っておっしゃってますが、売り込みにはいかないのですか?

そもそも俺、営業とか出来ないのよ。自分が表に立つことが嫌いなの。クラスの中でも一番悪いヤツ。クラスの中でも目立つヤツを裏であおるタイプ。

演出のアイデアやヒントはどういったところから得ているのですか。

日常生活、映画、海外のCM、雑誌、音楽、全部じゃないかな。どれとかいうのはないな。人と話している時もそうだし、新聞もあるかな。新聞も読むよ。読むっていうか、ガンガンガンガンと見ていくだけ。

他にはありますか?

それは言えないな。人には他人に見せられない「ダークサイド」っていうのがあるんだよ。裏の人間関係がきっとあるんだよ。ない?(笑)

目標とする人はいますか?

目標とするのは人じゃないね。神様とか仏様とか(笑)いやホント、待つのが仕事だからって言ったけど、テクニックは吸収しちゃえば良いけど。人柄とかを磨いておかないと、無理を言わなきゃいけない時もあるんじゃない?その時にあの人が言うんだから、やってみようかという気にさせるのが、人柄だったり知識だったりするから。そういう意味では神様みたいなもの。演出って、現場で笑っていれば良いんだもん。

これだけ数多くの演出を手がけていて、フリーなろうとは思いませんでしたか?

どこの会社のディレクターも皆考えているんじゃない?タイミングとか色々考えなくちゃいけないでしょ。今、事務系の人達にやって頂いているようなことを自分でやらなくちゃいけないとか。それでも辞めて一人でやっていく人と、面倒臭いからこのままでという人と。そんなに嫌な仕事ばかりしているワケでもないしね。

葵プロの社内ディレクターとして、最終的には何を目指していますか?

最終的には、“世界一”でしょう!目指すのは勝手じゃない?!社内のディレクターとしてはあまり意識していないと思う。葵プロ好きだっていうのもあるしね。仲良いヤツいっぱいいるしね。嫌いじゃないし。好きだよ。好きだからここにいます!っていうのも、100%じゃないけど・・・まずは“世界一”でしょう!!

最後に若手ディレクターに対して思うことはありますか?

同じ様に演出やる人って誰一人いないと思う。全部見て選べばいいと思う。全部見て、全部真似しろっというわけではない。俺より若いヤツが、俺と同じような口の利き方をしたら可笑しいし。そういう口の利き方が損だよっていうのは言っても良いけど、センスや感じ方やポリシー等、才能自体に触れることは言えない。テクニックについてはいくらでも言えるけど、その人の考え方については言えない。感じ方とかも自分なりのものがあるはずだと思うから、自分の思うとおりにやれば良いと思う。

 

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プロフィール

氏  名栗田惠造(くりたけいぞう)
経  歴:慶應義塾大学法学部卒業後、'83年に葵プロモーションに入社。
      現在、執行役員 兼 企画演出部 部長。
所属部署:クリエイティブディビジョン 企画演出部
代 表 作:[広告主/商品名/タイトル]
      ・東京ガス/企業/火はおいしさ・厨房
      ・ネスレジャパンアドミニストレーション/ネスカフェ香味焙煎/口まね秘書
      ・日産/ブルーバードシルフィ/月光浴
      ・トヨタ自動車/クルーガー/ミレー、広重、モネ
      ・三菱自動車/企業/Heart-beat・二人の競争 他






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